内科医ナイトウたちの家庭医学

島の診療所で働く内科医です。家庭でも活かせる医学情報を分かりやすくお伝えします。内科以外は他の科のメンバに執筆してもらっています。

もう風邪で抗生物質を飲むのは辞めにしませんか

風邪="抗生物質を飲めば治りが早くなる"は間違えです。
風邪="免疫による自然治癒を待つ"が正解です。

 

 風邪のほとんどはウイルス性

「風邪(かぜ)」はくしゃみ・鼻水・鼻づまり・のどの痛み・咳・痰などの上気道の
症状や発熱・頭痛・全身倦怠感・食欲不振といった全身症状全般を指します。風邪の
原因の90%ぐらいがウイルスによるものと言われています。ウイルス以外の原因(細
菌やマイコプラズマ)による風邪は健常者であればかかる可能性は非常に低いもので
す。

ウイルスと細菌の違い

細菌は細胞をもち、自己複製能力をもつ生物で、大きさはμm(1mmの1/1000)単位で
す。ブドウ球菌だと直径約1μm

一方ウイルスは内部に遺伝子を持っただけの構造で、生物ではありません。大きさは
nm(1μmの1/1000)単位です。ノロウイルスは直径30nm。

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ウイルスと細菌

抗生物質とは

抗生物質とは、漢字の通り、「生物」に抗う物質です。ウイルスは生物ではなく、細
菌は生物ですので、細菌による感染症を治療する薬を多くの場合指しています。

風邪に抗生物質が処方される理由

風邪で喉がウイルスに攻撃されると、喉の繊毛運動の動きが悪くなります。そのため細菌に感染しやすい状態になっており細菌感染による扁桃腺炎や副鼻腔炎を発症した場合などに抗生物質が処方されます。

昔は、風邪に伴って併発する細菌感染を予防するために抗生物質が処方されていました。ただ現在の医学では細菌感染の予防効果はないことが分かってきており、抗生物質の乱用を禁止する国も出始めている状況です。

理由なく抗生物質を飲むのは辞めましょう

抗生物質は細菌に効く薬であり、先ほど述べたように風邪はほとんどがウイルスによるものです。そのため抗生物質を飲んだから風邪が治ったわけではなくあくまで自身の免疫力で自然治癒しているのです。そればかりか、抗生物質は健康の維持に欠かせない常在細菌(良い菌)も一緒に殺してしまうため、健康を害する可能性まであります。

風邪と診断されて抗生物質が処方された場合、必要な理由などを聞いてみてもよいかもしれません。肺炎になった時や、溶連菌感染をおこした時には、抗生物質を必要とするケースがあるため、医師の診断理由をよく効いてみることをお勧めします。