内科医ナイトウたちの家庭医学

島の診療所で働く内科医です。家庭でも活かせる医学情報を分かりやすくお伝えします。内科以外は他の科のメンバに執筆してもらっています。

夏場に炊飯器の予約は危険か

夏に炊飯器の予約炊きはいいの?

仕事から帰ってお米を研いで炊飯するのは時間もかかるし、面倒ですよね。 よくやりがちなのが炊飯器の予約機能を使う方法。 朝セットして夜に、あるいは夜セットして朝に食べるというやり方。 これ実は食中毒の危険がたっぷりひそんでいるのです。 今回は具体的にどんな危険がひそんでいるのか、そして回避策について解説していきます。

目次

どんな危険性があるのか

炊飯器の中は、まさに雑菌の好む高温・多湿の環境。 密閉空間の中で目安としては水とお米が18度以上で4時間以上放置された場合、毒素型食中毒のリスクが大きく高まることになります。

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毒素型食中毒とは

症状: 30分〜6時間の潜伏を経て吐き気・嘔吐・下痢・腹痛など

雑菌の中でも今回のケースで特に気になるのは黄色ぶどう球菌です。これは人間の手・鼻・のどなどに広く存在していて。健康な人の20〜30%が保菌しているものです。 これ自体は通常加熱することで死滅するため、炊きたてのご飯にはほとんど含まれていません。 ただし、この菌は10〜40度の広い温度帯にかけてエンテロトキシンという熱に強い毒素を生成するのです。 ですので室温で数時間かけてこの毒素がたっぷりな状態になった場合に、毒素型食中毒を引き起こす可能性が高まるのです。

回避策

これから3つの回避策を紹介しますが、個人的に試した安全性と美味しさを考えると、2番の方法がいいのではないかとおもいます。

1. 安全度:99%、美味しさ:低 普通に炊いたものをラップに包んで冷凍庫保存

いわずとしれた安全な時短方法だが、やはり炊きたてと比べて明らかに米が含有する水分は蒸発してしまい、米の粒が崩れるなど味を低下させてしまします。

2. 安全度:90%、美味しさ:高 炊飯釜を冷蔵庫に入れて、必要な時に早炊き 

低温で長時間浸水させたお米は、物性は軟らかくなり、かつ粘りは増加することが研究結果でも明らかになっています。また早炊きにより加熱時間を短くすることで米の含有水分も高く保たれています。 実際に食べてみても味がよくなっておりおすすめの方法です。

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出典:米の浸漬温度・浸漬時間の調節による加工米飯の食味および食味保存性の向上 | 農研機構

安全性に関しても、冷蔵庫の温度はエンテロトキシンの発生する10度より低温なため、リスクもかなり低いと言えます。また黄色ぶどう球菌自体は冷蔵庫の温度帯でも増殖はしますが、炊飯によりほぼ死滅するため通常の炊飯と同じ位のリスクまで低下しています。

3. 安全度:50%、美味しさ:中 予約炊きの前に氷を入れる

エンテロトキシンが発生してします温度帯の時間を短くすることができます。 ただし予約時間が2時間を超えず、室温がそこまで高くない時は、回避策の一つにはなります。 炊飯釜に研いだ米と氷をいれた状態で規定の目盛りまで水を加えて炊きましょう。 氷が水に浮いている状態では氷が溶けたあとも水面の高さは変わらないので、「氷があるから目盛りより下で」なんてやらないようにしてください。かたーい米になっちゃいます。